「キッチンカーを始めたいけれど、営業許可って何をすればいいの?」——開業準備で必ずぶつかるのが、この保健所の手続きです。
キッチンカーで食品を売るには、保健所の「飲食店営業(自動車)」の許可が必須です。この記事では、許可取得の全体の流れ、必要な資格と書類、費用、そして意外と見落とされる「給排水タンクの容量」や「複数エリアでの許可」まで、これから開業する方が知っておくべきことを整理します。
キッチンカーに必要なのは「飲食店営業(自動車)」の許可
キッチンカーで車内調理をして販売する場合、必要になるのは 「飲食店営業(自動車)」 という区分の営業許可です。
以前は扱う商材によって「喫茶店営業」「菓子製造業」などに分かれていましたが、2021年の食品衛生法改正で、車内調理をするキッチンカーは原則「飲食店営業」に一本化されました。開業時は、この区分で申請します。
あわせて、食品衛生責任者の資格を持つ人を配置する必要があります。調理師・栄養士・製菓衛生師などの資格があればそのまま該当し、資格がない場合は各自治体で開催される養成講習会(1日程度)を受講すれば取得できます。
営業許可取得までの5ステップ
許可取得は、おおむね次の流れで進みます。
ステップ1:保健所に事前相談する(最重要)
まず、出店予定エリアを管轄する保健所に事前相談します。これが一番大事なステップです。
キッチンカーの設計図面(手書きの平面図でも可)と、販売予定メニューを持参して相談します。設備基準や必要書類、給排水タンクの容量などを確認できます。相談は1回で終わらず、数回行うのが一般的です。
なぜ事前相談が重要かというと、キッチンカーは「保健所の検査に合格するように作る」のが大前提だからです。車を作ってから基準を満たしていないと分かると、作り直しになりかねません。必ず製作前に相談してください。
ステップ2:基準を満たしたキッチンカーを用意する
保健所の指導に基づいて、設備基準を満たした車両を用意します。特に重要なのが「シンク」と「給排水タンク」です。
- シンク:手洗い用と器具洗浄用で2槽以上
- 給排水タンク:容量は調理内容による(後述)
- 運転席と調理スペースの区画:壁や板で仕切られていること
- 換気設備:室内を換気できること
ステップ3:必要書類を準備して申請する
書類を揃えて、保健所に申請します。一般的に必要な書類は次の通りです(自治体により異なります)。
- 営業許可申請書
- 営業設備の大要・配置図
- 食品衛生責任者の資格を証明するもの(調理師免許証、養成講習会修了証など)
- 車検証
- 仕込み場所の営業許可証の写し(別に仕込み場所がある場合)
- 検便結果(1年以内のもの)
- 井戸水を使う場合は水質検査の結果
- 法人の場合は登記事項証明書
ステップ4:施設検査を受ける
申請時、または後日、保健所の担当者がキッチンカーの実地検査を行います。許可を取る車両で保健所に行き、電気・ガス・水道が使える状態にして、設備が基準を満たしているか確認を受けます。
基準に適合しない場合は再検査となり、改善されないと不許可になることもあります。
ステップ5:営業許可証が交付される
検査に合格すると、営業許可証が交付されます。申請から交付まで、通常2週間程度かかります。営業開始予定日の15日前までに書類を持参するよう求める自治体もあるので、余裕を持って準備しましょう。
許可済みの標識は、キッチンカーの見やすい位置に取り付けます。
見落としがちな「給排水タンクの容量」
キッチンカーの許可で、意外な盲点になるのが給排水タンクの容量です。これは「車内でどんな調理をするか」で必要な容量が変わります。
| タンク容量の目安 | できる調理の範囲 |
|---|---|
| 40L | 簡易な調理(1工程程度)。温めや盛り付け中心 |
| 80L | 2工程程度の調理 |
| 200L | 大量の水を使う調理(麺類など)。車内での仕込みも可能 |
例えば、うどんやラーメンのように大量の水を使うメニューは、200L程度のタンクが必要になります。逆に、あらかじめ仕込んだものを温めて出すだけなら、40Lで足りることもあります。
ただし、この基準は自治体ごとに異なり、担当者によって解釈が変わることもあるため、必ず出店エリアの保健所に確認してください。タンクとシンクは設置に時間もお金もかかるので、車を作る前の確認が欠かせません。
費用と有効期限
営業許可の申請費用は、1件あたり1万4千円〜1万8千円ほどが目安です(自治体により差があります)。
注意したいのが、キッチンカーは移動するため、営業するエリアごとに許可が必要な点です。以前は都道府県・市ごとに個別取得が必要で、例えば東京・埼玉・神奈川・千葉の全域をカバーするには5万6千円〜7万2千円ほどかかりました。
ただし近年は基準の共通化が進んでいます。2025年6月からは関西広域連合の共通基準により、大阪府と和歌山県のどちらかで許可を取れば両方で営業できるようになりました。兵庫県でも県内での相互営業が可能になっています。今後こうした動きは広がる見込みですが、現時点では出店したいエリアごとに確認が必要です。
なお、営業許可の有効期限は5年(自治体により5〜8年)で、期限前に更新手続きが必要です。
開業後に必要な「出店場所」の確保も忘れずに
営業許可は、あくまで「営業できる資格」を得るための手続きです。許可を取っただけでは、売上は生まれません。開業を成功させるには、許可取得と並行して、実際に売る「出店場所」を確保するルートを持っておくことが大切です。
人気の出店場所は競争が激しく、個人でゼロから探すのは手間がかかります。出店者と出店場所をつなぐマッチングサービスを使えば、全国の募集情報から自分に合った出店先を効率的に探せます。営業許可の準備を進めながら、出店場所の確保も並行して考えておきましょう。
まとめ

キッチンカーの営業許可について、要点を振り返ります。
- 必要なのは 「飲食店営業(自動車)」の許可と食品衛生責任者の資格
- 最重要は 保健所への事前相談。車を作る前に必ず相談する
- 流れは「事前相談 → 車両準備 → 申請 → 施設検査 → 許可証交付」
- 給排水タンクの容量は調理内容で変わる(40L/80L/200L)。要確認
- 費用は1件1.4〜1.8万円、有効期限は5年。エリアごとに許可が必要
事前相談さえしっかり行えば、営業許可の取得はそれほど難しくありません。準備と情報収集を早めに始めて、スムーズな開業を目指しましょう。